単位の話その3(ん)

皇紀2678年11月3日

 昨日11月1日(木)は「計量記念日(@日本)」でした。ちなみに「世界計量記念日」は5月20日です(ん)
 以前世界計量記念日(ん)の記事で国際単位系(SI単位系)のうち、kg(キログラム),m(メートル),s(秒)の3つについての話を書きました。
今日はこの3つを含めて他の単位はどのようなものがあるのか?の話です(ん)
難しいお話になるので頭にヤカンを乗せておくとイイかもしれませんww

 SI単位系では基本単位として7つが定義されています。

  • kg(キログラム)
  • m(メートル)
  • s(秒)
  • A(アンペア)
  • K(ケルビン,熱力学温度)
  • mol(モル)
  • cd(カンデラ)

現存している他の単位(組立単位と言います。例えばワット)はこれら基本単位を使って表すことが出来ます。(この基本7単位を使ってほぼ全ての単位が原則表現できるように基本単位が考えられている)

単位名
定義
kg(キログラム)
国際キログラム原器の重さ
(原文:The kilogram is the unit of mass; it is equal to the mass of the international prototype of the kilogram.)
m(メートル)
一秒の299792458分の一の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ
(原文:The metre is the length of the path travelled by light in vacuum during a time interval of 1/299 792 458 of a second.)
s(秒)
セシウム133原子の基底状態の2つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間
(原文:The second is the duration of 9 192 631 770 periods of the radiation corresponding to the transition between the two hyperfine levels of the ground state of the caesium 133 atom.)
A(アンペア)
真空中に一メートル間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い日本の直線上導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ一メートルにつき2x10^-7(10のマイナス7乗)ニュートンの力を及ぼし合う一定の電流
(原文:The ampere is that constant current which, if maintained in two straight parallel conductors of infinite length, of negligible circular cross-section, and placed 1 m apart in vacuum, would produce between these conductors a force equal to 2 x 10^–7 newton per metre of length.)
K(ケルビン)
水の三重点の熱力学温度の273.16分の一
(原文:The kelvin, unit of thermodynamic temperature, is the fraction 1/273.16 of the thermodynamic temperature of the triple point of water.)
mol(モル)
1. 0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数に等しい数の要素粒子を含む系の物質量。
2. モルを用いるとき要素粒子が指定されなければ行けないが、それは原子、分子、イオン、電子、その他粒子、またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい。
(原文:1.The mole is the amount of substance of a system which contains as many elementary entities as there are atoms in 0.012 kilogram of carbon 12.
2.When the mole is used, the elementary entities must be specified and may be atoms, molecules, ions, electrons, other particles, or specified groups of such particles.)
cd(カンデラ)
周波数540×10^12(10の12乗)ヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が683分の1ワット毎ステラジアンである光源のその方向における光度。
(原文:The candela is the luminous intensity, in a given direction, of a source that emits monochromatic radiation of frequency 540 x 10^12 hertz and that has a radiant intensity in that direction of 1/683 watt per steradian.)

 cd(カンデラ)の定義ってわかりにくいですね・・・w
540×10^12(10の12乗)ヘルツの単色というのは黄緑色の光で、この周波数の光に対する人間の目の感度が一番高いのでこの周波数が選ばれています。赤では無いのですね・・・
ステラジアン[sr]は以下の図がわかりやすいでしょう

ステラジアン

ステラジアンについてさらに詳しく知りたいときは平面角(ラジアン)と立体角(ステラジアン)
ちなみに光度測定は積分球と言う装置で測ります。

 水の三重点とは氷、水、水蒸気の3つの状態が共存している状態のことをいいます。この状態の温度は0.01℃です。0℃じゃ無いんですね(ん)
あ、ちなみに三重点は水だけで無く、水銀や酸素でも存在します。酸素の三重点は-218.7916℃(54.3584K)です。

 基本単位以外(組み立て単位)は基本単位を使って表せます。主なものは・・・

組立単位
基本単位での表現
■Hz(周波数)
1/s
■N(ニュートン)
m.kg.s^-2
■Pa(パスカル)
m^-1.kg.s^-2
■J(ジュール)
m^2.kg.s^-2
■W(ワット)
m^2.kg.s^-3
■V(ボルト)
m^2.kg.s^-3.A^-1
■C(クーロン)
A.s

わかりにくいので図で表すと・・・
組み立て単位

SI単位系では大きな数字を表す接頭語も定義されていて

■接頭語■
接頭語呼び名 0の数(10の何乗か)
ヨタ 10^24
ゼタ 10^21
エクサ 10^18
ペタ 10^15
テラ 10^12
ギガ 10^9
メガ 10^6
キロ 10^3
ヘクト 10^2
デカ 10^1
デシ 10^-1
センチ 10^-2
ミリ 10^-3
マイクロ 10^-6
ナノ 10^-9
ピコ 10^-12
フェムト 10^-15
アト 10^-18
ゼプト 10^-21
ヨクト 10^-24

となっています

 さて、キログラムの定義は1889年(明治22年)に制定されてから約130年になりますが、表面の不純物の付着によりキログラム原器の質量が50マイクログラム程度変化していることが分かり、昨今のバイオテクノロジーやナノテクノロジー分野ではこの変化も無視できない状態になっています。
そこで国際度量衡委員会では原器に頼らない新しい質量の定義の策定に乗り出し、物理定数を元に再定義することが決定され、2018年11月に国際度量衡総会に新しい質量の定義を勧告することになっています。

 その新しいキログラムの定義は
『プランク定数の値を6.62607015 x 10^-34 (10のマイナス34乗)ジュール・秒と定めることにより設定される』
です。キログラムはプランク定数から間接的に定義されるようになります。
・・・正直コレが質量とどう繋がるのかがさっぱり分かりませんよね?(あれ)
つまり
1.ある波長をもつ純粋な電磁波(光)の粒子一個あたりのエネルギーをプランク定数の値から求める。(プランク定数(J.s) X 周波数(1/s) = エネルギー(J)になる)

2.エネルギーと質量の等価原理(E=mc^2 で表されるアインシュタインの有名理論)から一個あたりの質量が求まる。

3.それを集めて一キログラムとする

・・・・・・・・・・・頭が沸騰しそうです(はず)

 キログラムの定義変更に伴い、A(アンペア)と熱力学温度(ケルビン)、mol(モル)の定義もそれぞれ変更される予定です。
○アンペアの新定義
『電気素量の値を正確に1.602176634 x 10^-19(10のマイナス19乗)クーロン(C)と定めることにより設定される』
○熱力学温度の新定義
『ボルツマン定数の値を正確に1.3806490 x 10^-23(10のマイナス23乗)ジュール/ケルビンと定めることにより設定される』
○モルの新定義
『正確に6.02214076 x 10^23(10の23乗)個の要素粒子を含む。この数値はアボガドロ定数である』

電気素量や物理定数を元にした定義になりました。

熱力学温度単位(K)がなぜボルツマン定数の値を用いて定義できるのか。一言で言うと理想気体の状態方程式が関係しているそう。
詳しくお知りになりたい方は温度(K)についての基礎解説と最新動向(山田善郎)(計測と制御 第53巻第8号2014年8月号)

これらの新定義により
1)キログラム原器については、長期的な質量の変化という危険から解放されることになった。
2)電流については長さと質量の精度に影響されていたのが無くなった。(直接の関係を断ち切れた)
3)温度については水の三重点状態の不安定さからの解放。(水に対する異物混入による不安定化の問題)

 なお、時間(秒)のさらなる高精度化研究も行われており、将来には今のセシウム原子の振動から、ストロンチウム(Sr)原子を用いた「光格子時計」が検討されています。精度は今のセシウム原子時計の1000倍の精度(おおよそ300億年に一秒の誤差)になりそうとのこと。(10京分の1の精度)

 ここまでお読みいただき感謝です。間違いがあれば言ってくださいね^^

注釈:SI=Systeme International d’unites(フランス語)
参考文献:
(1)新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる 臼田孝 講談社
(2)BIPM Base units https://www.bipm.org/en/measurement-units/base-units.html

↓沸騰した頭を冷やす動画↓


いつの間に揃えたのでしょうか・・・(びっくり)

 ではでは~ε=ε=ε=ε=ε= タタタタ・・・。゜.☆ ドロン♪♪

雑学

Posted by まっちゃん